おしらせ
おしらせ
作成日:2020/08/20
介護付有料老人ホームでの「食事の提供」には、消費税が課税される!



介護付有料老人ホームで提供される食事やおやつに消費税が課税されるかどうかについて、
国税不服審判所で争われていた事例があったのですが、
その裁決(裁判所で言う判決のようなもの)が非常に興味深い内容でしたので、ご紹介します。

[ポイント]

・有料老人ホームにおいて行われる食事の提供、おやつの提供のいずれも、
消費税法上の非課税取引には該当しない。

[解説]

1. 各法律における有料老人ホームの取扱い

実は、有料老人ホームについては、各法律での位置づけが若干異なっています。
まずはその違いを確認してみましょう。

(1)介護保険法

介護保険法上、
有料老人ホームで提供されるサービスの種類は、
入居者に対し、一定の計画に基づいて行われる、
入浴、排せつ、食事等の介護、洗濯、掃除等の家事その他の日常生活上の世話等であるとされています。

(2)老人福祉法

老人福祉法上、
有料老人ホームは、
老人を入居させ、
入浴、排せつ若しくは食事の介護食事の提供、洗濯、掃除等の家事又は健康管理の供与をする事業を行う施設である、
と定義されています。

(3)消費税法

消費税法上、
有料老人ホームでの各サービスのうち、介護保険法上の居宅サービスについては、
利用者の選定により提供されるものを除き、
原則として消費税は非課税とされています。

2. 食事やおやつの提供についての消費税の課否判定

老人福祉法上の有料老人ホームは、
上記1(2)のとおり、「食事の提供」をすることを前提としています。

しかし、介護保険法上の有料老人ホームのサービスには、
「食事等の介護」は含まれていますが、「食事の提供」は含まれていません。

このため、
介護付有料老人ホームにおける食事の提供は、消費税法上の非課税取引には該当しない、
と国税不服審判所は判断をしました。


なお、おやつの提供についても、飲食物の提供であることから、
食事の提供と同様に非課税取引には該当しないものという判断が下されました。


実は、この裁決は、国税不服審判所は非公開としています。
税理士協同組合からの情報開示請求に基づいて、今回その内容が一部公開されたものを入手しました。

実務上、介護・福祉事業についての消費税の判定は非常に困難です。
今回の国税不服審判所の裁決はその判定に重要な影響があるのですが、非公開のため、
多くの福祉事業者・会計事務所は把握していない可能性があります。

また、「食事の提供」と似たような単語で「食材費の徴収」については、
消費税は非課税でよい、という国税庁の見解がありますので、非常に理解しにくくなっています。

もしかしたら、多くの事業所や会計事務所が、
食事の提供についての消費税の取扱いを非課税としてしまっているかもしれません。

この裁決が出たのは平成29年です。

税務調査は基本的に過去3年間さかのぼりますので、
今後の税務調査において、
有料老人ホームを運営する社会福祉法人などに対し、
この裁決の考え方を根拠として、過去3年分の修正申告を求められる事例がでてきそうな気がします。

※予備知識〜税務調査の結果に対する不服申し立てから訴訟までの一般的な流れ

税務調査で、自主修正申告を求められた内容に納得がいかずにそれを行わない場合、
最終的に行政処分が下される場合があります。
その場合には税務署長に「異議申し立て」をすることができ、
その異議申し立てについて納得のいく結果が得られない場合には、
「国税不服審判所」に審査請求をすることができます。
この記事での「裁決」とは、その審査請求に対する国税不服審判所の判断のことをいいます。
なお、裁決に納得がいかない場合には、国を相手取り、訴訟を起こすことができます。


(当事務所に許可なく本記事を複製・転載することを禁止いたします)



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